子供の成長をちかくに感じる工夫
こちらのお客さまは、諸事情により“家をもつことをあきらめた”時期がありました。その問題点をわれわれとの話合いとご家族の協力で少しずつ取り除き、建築にいたりました。
このため、すこしご自身に劣等感のようなものがあったのか打ち合わせではあまり意見もおっしゃらず、ものごとがタンタンと進んでいきました。しかし、これが後に正式な設計図面を破棄しなければならない事態となります。
打合せを進めるにつれ、納得がいかないご様子がうかがえたので、思い切ってお気持ちを打ち明けていただきました。今まで諸事情からガマンばかりされており、自分はワガママを言ってはいけないと思われていたようで、われわれもそのことに気づかず一般的なお客様とおなじ進め方をしたことを反省しつつ、今度は自分の意見をどんどん言ってもらいたいと伝えました。
そこからは、希望や要望がどんどんあふれ出てきました。
通常であれば「コア(基本)となるものはなにか」をかんがえて(しぼって)もらってから設計に入ります。これは、引き算の美学でなんでも取り入れてしまうと、使い勝手がわるくなることが往々にしてあるからです。
しかし、このお客さまはこれまでの経緯をふまえ、すべてのことをまんべんなくかなえてあげることが幸福につながる様に思えたので、なんでも少しずつ取り入れる設計といたしました。
プランニング_Data
設計条件
―この土地の特徴―
・道路から少し高い
・40坪以下、台形型
―お施主の希望―
・家事室としてユーティリティールーム
・部屋をとおらずバルコニーへ
・書斎と本棚
・できるだけ収納
・遊びの要素
・子供の帰宅をかんじる間取り
・箱庭
設計者からのアンサー
土地の形状から、北側のななめ部分をあますことなく利用するために建物形状を工夫しました。
間取りは収納を増やすためにリビング経由方式としましたが、トイレ、階段は玄関ホールからのアクセスとして匂いや熱逃げを考慮しています。お施主の要望である「子供の帰宅をかんじたい」「子供が成長しても近い距離でいたい」については、リビングと階段の間の壁に小窓をもうけて、それぞれの気配を感じ取れるようにしました。
また、本棚の利用方法をお聞きすると「子供さんのため」が含まれていたので、書斎ではなく2階廊下のデッドスペースにおつくりしました。こういうところが注文住宅のよさではないかと思います。
家事動線を考慮して廊下から直接出入りできるバルコニーをつくりましたが、面積的にはすこしもったいない気もします。そこで、その廊下の天井に昇降式の洗濯バーを設置し雨の日の仮干場として有効利用できるアドバイスをしています。
奥様の要望だったニッチ、フロアーフォール、ホワイトボード壁、目線をさまたげない間仕切りなど、遊びの要素もしっかり取り入れた設計となっております。
たとえ「ちょっと小さいかな?」とおもう敷地でも、きちんと設計をすれば駐車場2台と箱庭、遊びもとりいれた約36坪の家を建築できる。
犬山市Fさんの家_基本Data
家族構成は夫婦40代+子ども2人/敷地面積128.33㎡(38.82坪)/1F床面積59.62㎡(18.04坪)2F床面積58.38㎡(17.66坪)延床面118.00㎡(35.70坪)/施工年月2014年3月/本体価格1,680万円
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