趣味と実益をかねる店舗のある家
こちらのお客は、店舗のある住宅(店舗併用住宅)がご希望でした。事業を始めるばあい、資金にゆとりがあり敷地も店舗も広いものを用意できればいいのですが、そう簡単なことではありません。まして、趣味を実益に昇華させようとするならば、小さく始めて利益を確保することが最優先だとおもいます。このため、限られた資金で敷地と建物をそろえるなら、住宅の1室を事業用とする店舗併用住宅がいいのですが、店舗に居住部分をうばわれてしまいがち。
そこで、仕事につかう家具や道具の寸法をかんがえて配置計画を作成。店舗併用住宅では仕事とプライベートをわけるのがむずかしくなるため、空間をほどよく分離させる計画が重要。立地条件のメリットを最大限いかすとともに、事業資金と展開もふくめて予算にあわせた設計と建築をしています。
プランニング_Data
設計条件
―この土地の特徴―
・標準てきなおおきさの土地
・南、西が道路の角地
・隣地が景色の良い公園
―お施主の希望―
・2階に店舗
・店舗と住宅部分の動線分離
・駐車場3台+駐輪スペース
・ランドリースペース
・廊下に洗面台
・その他、あまり費用をかけずにいろいろしたい
設計者からのアンサー
まず、現地調査のときに近隣公園との位置関係をチェックしました。とても景色が良いのでマドの位置、大きさ、高さで風景(借景)が楽しめる設計の家にしたいとおもいました。ただ、マドはなんでもかんでも大きくすればいいわけではありません。とくに西側のマドは熱(暑さ)を取り込んでしまうため、日差しの角度をかんがえて適度にさえぎることが重要です。
この住宅は店舗併用のため、ゾーニングの考えかたが出来栄えをおおきく左右させます。敷地の南と西の2方向道路のため、そこを利用してゾーニングしています。
*ゾーニングとは、エリア(この場合は住宅と店舗)ごとに進入ルートと動線をそれぞれ考えたうえで、距離(動線)をどの程度まじりあわせるかを検討することをいいます。住宅でゾーニングのことをいう人もいますが、とんでもなく大きい住宅以外は必要ありません。それより一般住宅では動線交差(クロスオーバー)をなくすことが安全でつかいやすい家になります。
リビングを1階にしたい強い要望がありましたので店舗を2階にしました。
*本来、2階の店舗はさけるべきです。不特定多数の人をあつめるのに階段の昇降は客数をかくじつに減らすからです。今回は予約制、会員制での運営をお考えでしたので私(設計者)も合意しました。もし、このようなお考えがなければ断固反対したと思います。理由は、どんなにご希望どうりに設計したとしても幸せになれるとは限らないとおもうからです。すこしのゆがみ(今回ですと商売のことですが)で生活がぎくしゃくする可能性があれば、事前に排除してあげることも設計者のつとめだと私はおもっています。
店舗におく設備機器の実機をいっしょに見学したり、そのほか家具のサイズ確認、配置想定、自分(店員)とお客さんとの動線を考慮してコンセントや照明の計画をしていきます。本当は店舗部分のサイズをもうすこしおおきくしたいところですが実際にたてられる建物の大きさには限界があり、店舗をひろげれば住宅部分がせまくなる綱引き状態になります。お施主といろいろな話合いと設計打ち合わせをかさねて塩梅(あんばい)がいい設計になりました。
犬山市Yさんの家_基本Data
家族構成は夫婦30代+子ども1人/敷地面積140.01㎡(42.35坪)/1F床面積68.17㎡(20.62坪)2F床面積72.87㎡(22.04坪)延床面141.04㎡(42.66坪)/施工年月2018年3月/本体価格1,970万円
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